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八王子陸運事務所には、協力をしていただいた日産陸送のスタッフとJoy Projectのスタッフが集合した。Joy Projectの研究員渡辺二良と日産陸送の担当者牧田氏が事前に関東運輸局から提示されていた書類一式「アナフィールド社から送られた固定装置の証明書一式」と「固定装置とシートベルトの取り付けに使用した部品ナンバー表(JIS規格)」を提出。担当者が書類上の審査をおこなった。
書類上の審査は無事終了し、次はジョイスティックコントロールカーが一般車と共に検査ラインに乗った。ライト類やスピードメーター類、車長、車幅、車高の確認等が迅速におこなわれ無事に検査ラインから車が出てきた。
すべての検査が終了し問題点は全くなく、ついにジョイスティックコントロールカーが正式に認可されナンバーが交付された。1997年4月28日のことであった。
横浜港にジョイスティックコントロールカーが上陸してからわずか42日目のことであり、Joy Projectが発足してからわずか2年と59日という短い時間で実現した快挙であつた。
これにより、障害者が免許を取るときの条件となっていた「自分で運転席に乗り移れること」「車椅子を自分で車内に積み込めること」などが無意味な規制となった。
そして、ジョイスティックコントロール装置を使用することにより、今まで免許を取ることを拒否され続けてきた重度の障害者の運転免許への道が大きく開かれた。
それは重度障害者の移動の権利を保障する第一歩であった。
第3節 当事者からの大きな反響
「ジョイバン全国キャラバン」はジョイスティックコントロールカーにナンバーが交付されることが遅くなることも考えられたため全国をキャリーカーで移動することも考えられていた。しかし、その心配も全くなくなった。
その一方で、ニュースステーションでの2回にわたる特集枠で放映された反響は大きく、放映の翌日は事務所の電話が鳴りっぱなしといってもいいような状況であった。確実に全国に波紋と賛同の渦を巻き起こしている実感があった。メディアヘの露出が他のメディアの取材を呼び、全国紙を含む各新聞紙上でも盛んに掲載され。また、自動車関係雑誌や福祉関係雑誌でも取材が多く入り、4月から5月にかけて次々に取り上げられた。
それらのメディアヘの反応が確実に返ってきた。全国各地からの問い合わせが殺到したのである。自立生活センター、リハビリ等の医療機関を始め、障害者個人やグループ、あるいは自動車関係の事業者からの問い合わせもあった。
そのほとんどは「ぜひ車を見たい」という内容で、10ヶ所でおこなわれる全国キャラバンの会場の案内をしたが、「会場の場所が遠いので行けない、私の街へも来て欲しい」という依頼が多かった。
車を見て当事者に全国各地で声を上げてもらうことも必要なことなので、ナンバーが付き自走することができるようになったこともあり、キャラバンの会場を増やすことにした。
ジョイスティックコントロールカーを実際に「見て」「触れて」「乗って」理解してもらうことにより、その波及効果は何倍にもなると考えたからである。そのことによってJoy Projectの活動の推進力は大きくなると考えられた。

 

 

 

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